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停滞と閉塞を打ち破る爆発力を秘めた
 ~デジタル経営~
ー経営レベルでのデジタルテクノロジーの戦略的活用が企業の生死を左右するー
 
数年前からAIやIoT、又デジタルトランスフォーメーションやデジタルマーケティングという言葉がメディアに溢れてくるようになりました。
経営者の方は「こういったことに我社はどう取り組んでいるのだろう?」と気になっていることと思われます。
これらはすべてデジタルテクノロジーによるものですが、デジタルテクノロジーが人々の生活や企業経営にどのような影響を及ぼすのか?あるいはどう経営に生かせば企業は繁栄するのか?
そういった観点から、経営視点で経営層及び経営企画層に向けて、デジタルテクノロジーと経営の関係について分かりやすく解いていきます。
(※週1回を目途に更新します。)
 
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はじめに
2017-09-11
 表題にデジタルとあるのでIT関係の話と思われるかもしれないがそうではない。
 経営層や経営企画層のための経営ガイドである。
 
 企業には経営戦略や事業目的があり、それらを達成するために組織とビジネスプロセスがある。
 組織とは、経営戦略や事業目的を達成するために必要な機能を組み合わせたものであり、組織を動かして合目的に機能させるものがビジネスプロセスである。
 
 ビジネスプロセスは業務とその運用により成り立っているが、そこにおいて業務運用をより効率的合目的に行う手段として様々なツールが使われる。
 ツールは、そろばん→電卓→パソコンといったように進化しそれによって業務のやり方が変化したり、組織内のある部署の人数が少なくなったりした。が、そのことによって組織の構造が変化するようなことはなかったし、まして経営やビジネスモデルに影響を与えるまでのことはなかった。
 
 しかしながら、手段の変革が本質的且つあまりに大きなものであった場合、事業戦略や事業の在り方あるいはビジネスモデルそのものやビジネスプロセスがあっという間に大きく変化して、ついていけない企業が出てきたり、中には産業そのものが衰退してしまうことがある。
 また一方で、新しい手段(テクノロジー)をうまく利用して新しく台頭してくる企業や産業があるのは歴史を振り返っても明らかだ。
 人力・馬力→蒸気機関→電気という、モノを動かす手段である動力の変革、石炭→石油→原子力という動力源を動かす燃料(手段の一部)の変遷、もう少し小さいところではレコード→CD→ダウンロードという音楽を楽しむための手段の進化、又、半導体のように変遷や進化の過程を経ずにいきなり出現してきた革命的なテクノロジーもある。
 中でもビジネスの世界に大きな影響を与えたのはコンピュータの出現であろう。
 半導体の出現と相まってその驚くべき技術革新(集積度の向上とそれによる記憶容量と処理性能の飛躍的向上とそれらに反比例しての大幅なコストダウン)によって、コンピュータは出現後急速な進化と普及を遂げそれは現在も続いている。
 
 企業の在り方や産業の在り方をコペルニクス的に大きく変えるコンピュータのようなテクノロジー(手段)によって例えて言えば〝尾が犬を振る〟ようなことが起きる。
 経営層が関知しないわけにはいかない。
 
 と言ってもトップがコンピュータを含むインフォーメーションテクノロジー(IT)について勉強する必要があると言いたいわけではない。
 それらが持つ特性、即ち、時間と距離の超越、膨大なデータを極小のスペースに格納でき、そこから自由に必要なデータを取り出せる、あるいは一度覚えたことはいつまでも覚えている、一度教えたやり方を同じ品質でいつまでも行える、といった特性がビジネスにどのようなインパクトを与えるのかを経営レベルで把握すれば十分だ。
 間違っても専門家例えば自社のシステム部門の人間などに聞いたりしてはいけない。
 
 何故か?
 彼らは専門家故に専門用語を使って専門的な説明をしようとする。
 素人が専門家の話を聞くと、聞けば聞くほど頭の中がスパゲティ状態になって分からなくなるからだ。全く意味がなく無駄だ。トップがそのようなことにエネルギーを費やすべきではない。
 もし誰かに聞くのであれば、専門的なことを経営の立場に立って経営の言葉で、経営に影響を与える範囲に絞ってわかりやすく説明してくれる人から聞かねばならない。
 
 セブンイレブンはITの戦略的活用とオムニチャネル等デジタル革新の最先端を行っている企業であるが、トップを務めていた鈴木さんは特にITの勉強をしたわけでもなく詳しくもない。
 自室の端末で現場(店舗)の情報を見るための操作ができるぐらいだ。
 しかしながら「我々の事業の米びつは情報だ。その情報に対する投資を惜しんではならない。」と言う発言に見られるように見事に自社の経営におけるITシステムの本質を経営者感覚で捉えている。
 一方で、ITそのものについては関心を持っているわけではないため、事業戦略上必要なことであれば、情報システム担当役員がびっくりしてひっくり変えるような無茶な指示を平気で出して、情報システム部門の〝できない理由〟には一切耳を貸さない。
 
 同じ業界で競合している2社があって、一方の企業がITを利用した一歩進んだ事業戦略を打ち出してたりすると、もう一方の企業のシステム責任者がトップから叱責を受けるということがよくあるが、大きな間違いである。
 システム部門のミッションはシステムソリューション(解決手段)の提供であって、事業戦略を立てたりそのグランドデザインを描いたりすることではないからだ。又、そういうスキルも持っていない。そこのところを明確に分けておかなければ、できないことをできない部署に指示してしまうことになる。
 
 デジタル化は、コンピュータや半導体に匹敵するいやそれ以上の影響を企業に与えるものであり、従って経営に深くかかわってくる経営マターなのだと言える。
 
 ではデジタル化とはどういうことなのか?
 又どう対応すべきなのか?
 
 といったことについて経営視点で経営層及び経営企画層に向けて分かりやすく解いてご理解を深めていただくのがこのブログの目的である。
 
第1章 デジタル革命がもたらすインパクト
2017-09-15
1.デジタルテクノロジーがもたらすインパクト
デジタルテクノロジーは、停滞と閉塞を打ち破る爆発力を秘めていると同時に、あっという間に時代に取り残される破壊力を持っている。
 
   ❶「10年以内に4割の企業が消滅」
 
 「デジタル経営に乗り遅れた4割の企業は10年以内に姿を消すだろう。経営のデジタル化を図った新興企業が次々とマーケットに参入してくるからだ。」
と衝撃的な発言をするのは米シスコシステムズのジョン・チェンバース前会長兼CEOだ。(2015年6月8日、米サンディエゴで開催された同社の年次イベントの基調講演)
 チェンバース氏は「情報時代からデジタル時代へ突入した今日においては、すべての企業がビジネスの〝デジタル化〟を迫られている一方で、多くの企業がそのデジタル化に失敗するだろう」とみている。
 チェンバース氏は、2014年度の投資家向け年次報告書において、米JPモルガン・チェースのジェームズ・ダイモンCEOが、多くのスタートアップが金融市場に参入し始めている状況に危機感を表したことに触れて、「全ての企業、政府がデジタル化するときに来ている」と力説する一方で「87%のCEOが、ビジネスのデジタル化が極めて重要だと考えているにもかかわらず、わずか7%の企業しか、実際のデジタル戦略を策定していない」(チェンバース氏)ことから「企業がデジタル化を成し遂げるのは容易なことではない」と考えているからだ。
 
 流通業の世界に業態の循環的成長という言葉がある。以下のような状況を表した言葉だ。
 
⑴新しい安売り技術を開発したアウトサイダーが新たに小売機構に侵入してくる。
⑵侵入者は既存小売機関との間に激しい価格競争を引き起こす。
⑶侵入者は安売りを可能にする技術革新を行っており、既存小売機関はそれをもっていないため、価格競争では侵入者が優位に立ち、その間、販売額は伸び創業者利潤を蓄積する。
⑷創業者利潤は多くの場合再投資され、侵入者は大規模化する。
⑸新しい小売機関の将来性に着目した追随者が増え、彼らは侵入者の技術革新を取り入れる。
⑹すると、侵入者の価格上の優位は崩れ始め、他方、投資規模の拡大と組織の大型化のため、侵入者は、利潤を必要とするようになる。
⑺その結果、侵入者即ち新興小売機関は、次第にディスカウンターとしての性格をうすめ、価格ではなくサービスで顧客を吸収しようと努力しはじめる。
⑻この過程で、既存小売機関との価格競争は姿を消し、新興小売機関は小売機構の正統的メンバーとして定着する。
⑼このころ別の新しい安売り技術を開発したアウトサイダーが、新たなタイプのディスカウンターとして小売機構に侵入すべく準備している。
 
 丁度これと同じように、デジタル化に踏み出さなかったりデジタル化に失敗する企業が多ければデジタル武装した新規参入者(ベンチャー)が次々に台頭してくる。必ず台頭してくる。というか既に準備中もしくは小さな芽が続々と生まれていると考えた方がいい。
 そしてそのことにより既成の企業は競争力を失い、窮地に陥る。チェンバース氏にはそのことが見えているし、ジェームス・ダイモン氏は目の当たりにしている。
 又、シスコシステムズ鈴木社長は「スイスのビジネススクールIMDとシスコシステムズの共同調査によれば、『各業界上位10社のうち、その4割近くが今後5年以内に市場から脱落する』という結果が示されている。」と講演で述べている。
 さらにMITの調査では、デジタルビジネスに積極的に取り組む企業は、競合他社より12%高い市場評価を得るという結果も出ているという。一方世界経済フォーラム2015のレポートによれば、「フランスではデジタライゼーションによってGDPを20%アップさせ、100万人規模の雇用を創出する」との報告がなされている。
 2016年11月13日放映のNHKスペシャルによれば、中国では政府が民間資産1800兆円の活性化を考え民間投資の規制を緩めたため、多くの民間投資会社がインターネット融資(画面を見ている間に20分~40分で必要な融資資金が集まる)を始めた結果、毎日12000社のベンチャーが生まれているという。
 もちろんその9割以上が2年から3年以内に消えると思われるが政府主導のインターネット金融によりベンチャーマーケットが活性化しているのは間違いないようだ。
 
 
❷「向こう10年を見据えた経営計画が立てられない」
2017-09-25
 デジタルテクノロジーの変化は大きいだけでなくスピードが速いのが特徴だ。従って10年先を見据えた経営計画の立案を断念する企業が出てきている。デジタルテクノロジーの変化はドッグイヤー以上と言われ10年先にはどんな革命的なテクノロジーが出現しているか予測がつかないからだ。
 あるグローバル企業のCFOがロンドンで2015年6月に開催されたイベントThe Telegraph Digital Leaders conference において「“今後10年間に目を向けること"をやめ、“3年から5年先のことに考えを集中する″ようになった」と語ったことをAdobe Digital Marketing Forumが報じている。(以上❶❷はIT Proのニュースを参照)
 
 
     ❸「世の中何が起こるか分からない」
          
~スマホの普及によって売上の激減に見舞われたネット生保CEOの話~
 
 デジタル化が経営にインパクトを与えた例としてネット生保のライフネット生命の例を日経新聞の電子版の同社出口CEOへのインタビュー記事から取り上げてみよう。
 ネットライフ生命はネット生命の草分けで9社あるネット生保のトップランナーだが、スマホの普及によってかつて契約数の激減に見舞われたことがあるそうだ。
 出口CEOはインタビュー記事の中で「開業時にはスマホはゼロだった。当然のこととして当社は“お客さまはパソコンで保険を申し込む”と想定してシステムを構築した。パソコンなら普通の場合は約15分で申し込みが完了する。ところがスマホは画面が小さいため、40分前後かかってしまう。面倒なので途中で止める人が続出する。そうすると同じ数のお客さまが当社のウェブサイトを訪れたとしても、パソコンがスマホに置き換わるだけで契約数が4分の1以下に減ってしまうのだ。正直、開業前にはこのようなデバイスの急激な変化は想定ができなかった。6年間経営をやってきて骨身にしみたことは“世の中は何が起こるか分からない。変化に対応するのが経営の真髄”というごく当たり前の事実だった。」と語っている。
 
 
2.テクノロジーの進化に取り残されたレガシーシステム
2017-10-03
    ❶毎年システム予算の7割が古いレガシーシステムの維持管理に消えていく
 
 私はかつて大手企業13社のCIOが参加したシステム研究会(大手ITベンダー主催)において「経営に直結するITの在り方」とのテーマで1年間コーディネータを務めたことがある。
 そこでのCIOの皆さんの話を総括すると「トップからは常日頃『経営に役立つシステムを作れ』とか『経営課題に連動しないシステム構築は意味がない』と言われているが、システム関連予算の7割が現状の古い(中には「30年前のホストを無理して使っている」という企業もあった。)レガシー基幹システムの維持管理と保守に食われてしまい、新しいシステム構築に投入できるのは3割位しかない。しかも維持管理要員の増加に伴い維持管理コストは増大する一方だ。」とのことであった。トップが聞いたら頭に血が上りそうな実態だ。『金ばかりかかる割には少しも役に立っていない』とトップから言われる」(研究会メンバー)所以だ。
 
 古いコンピュータ資産の維持管理に予算が固定化されて、攻めのITや戦略的IT活用への投資ができずに、閉塞感や停滞感に企業が覆われている。
 
 
     ❷しかもなんと、そのように毎年多くの金、人、時間を費して維持管理しているレガシーシステムの半分程度しか使われ
       ていない
 
 一方で、「ある大企業が自社のシステムについて調べたところ、膨大な数のプログラムのうち、実際に利用されているのは4割にすぎず、残りの6割は調査期間中には全く使われていなかった」という驚くべき話が日経コンピュータ電子版の木村岳史元日経コンピュータ編集長のコラムで紹介されていた。つまり「毎年毎年大きなシステム予算の7割を使って大事に維持管理されている古いホストコンピュータのプログラムの6割が使われていない」ということになる。
 大規模システムにおいては、「ざっくり言って、半分以上のプログラムは使われていないのではないか」と語る技術者が多いとのことである。驚くべき無駄ではなかろうか?
 研究会のメンバーからは「コンピュータに対してトップは根強い疑念をいただいている」との話があったが、残念ながらトップの疑念は当たっていたのだ。
 
❸ブラックボックス化して手が付けられない古い基幹システム
2017-10-10
  しかし驚くのはまだ早い。研究会のメンバーによれば、「古い基幹システムの膨大なプログラムの開発者が世代交代していて引き継ぎがなされていないためブラックボックス化している」というのだ。いい加減だから引き継ぎがされていないのではなく引き継ぐ者がいないのだ。
  退職した開発者はCOBOLでプログラムを書いているのだが、開発言語も進化しておりもはやCOBOLができる開発者がいないのだ。又、保守作業も完全に属人化されており、担当者でないと恐くて触れない状態になっている。
 
  木村元編集長によれば、大手金融機関の場合、レガシープログラムの保守業務だけに年間500億円以上の費用を掛けている場合もあるそうだ。しかも、投資ではなく費用だから、毎年ほぼ同額が予算化され費消される。スパゲッティ化したプログラムを維持しているために発生する膨大な浪費だ。
  そのカネを攻めのIT投資に振り向けたらどんなにか経営に貢献できるだろうに。
  逆に大手ITベンダーにとっては毎年継続的に発生する保守運用業務は利益の確保がしやすいビジネスになっている。保守が属人化しているためにITベンダーは仕事を切られる心配がほぼないからだ。(これに対してシステムの刷新という本来業務の方は、営業活動というコストをかけても受注できるかどうか分からない上に、大変な開発コスト(人員と時間)をかけて尚赤字案件になるリスクがある。そこでITベンダーは若手にCOBOLの習得という後ろ向きの研修を行い客先に送り込むことになる。)
  時間のロスも半端ではない。なにせ「一行直すだけでも2ヶ月かかる」世界だ。当然、その作業に時間を取られていると、他のプログラムの改修案件も遅延する。
 
  これからは、ITを活用したサービスを素早く立ち上げ、ニーズに合わせて内容を臨機応変に改善していかなければならないのだが、既存システムの対応の遅れは経営に大きなダメージを与える。
  単にIT部門の時間のロスだけでなく、要請した利用部門にとっても大きな時間のロスだ。事情の分からない利用部門からすると、「なぜIT部門はいつも忙しいと言って要求を断るのか」と不満に思うが、その理由の多くはスパゲッティ化したプログラムにある。
 
  筆者は以前ある大手ITベンダーから依頼されて、重要顧客数十社の顧客満足調査を行ったことがあるが、その時もそのベンダーのサポートに不満を持っているある大手企業のCIOから「COBOLで書かれたレガシープログラムが膨大にあるのだが、COBOLができる人間がほとんどいなくて手が付けられないため、他社へのリプレースもできなくて困っている」という話があった。
 
  銀行や鉄道あるいは航空会社でシステムトラブルが発生した場合、復旧にかなりの時間がかかることはしばしば報道されるところである。
「復旧に何故そんなに時間がかかるのだろうか?」
前述のように使われていない幽霊プログラムが大量に存在するため、影響の及ぶ範囲を特定する際、それらをすべて精査しなければならないからだ。
 「日本企業にはこうした古いプログラムが山のようにある。レガシープログラムという負の資産は、メインフレームなどの上に鎮座しカネや時間、人を浪費し続ける。そのあおりを食って、ビジネスのデジタル化に対応するカネも時間も足りなくなる。技術者は古い技術に縛り付けられて、キャリアを無為に過す。企業にとっても、個人にとっても、そして日本全体にとっても恐ろしいほどのマイナスとなっている。事態はかなり深刻だ。」と木村元編集長のコラムは続ける。研究会のメンバーからも「プログラムの整理が十分されていないため、既に使用していないプログラムの修正まで実施することになってしまっている。」との報告があった。
 
  今や大規模システムを使っている大手企業ほど幽霊プログラムを大量に抱えたレガシーシステムに、人、金、時間を食いつぶされて自縄自縛に陥っている。
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